Kerkytheaに挑むその4

マテリアルの基本編

今回は「Kerkythea Rendering System」(以下KTと略す)のマテリアルの基本的な使い方についてご紹介します。
前回の”Self Luminance”(エミッタ照明)もそのひとつですが、マテリアルを編集(操作)することで面の光沢や反射、明るさ、透明度、凸凹等を表現することが可能です。これらは大半が現在のGSUのマテリアル環境では表現出来ない部分ですので、KT側で操作する必要がありますが、ちょっと効果を加えるだけで、非常に表現力に富んだレンダリング結果が期待出来ます。ただし、マテリアルの操作は、KTに限らず、非常に奥の深い分野です。概念や用語だけでも、とても紹介しきれるものではありませんので、ここでは最小限の結果のみをご紹介することとします。用語や紹介しきれない項目については、他のレンダラーでも大きな違いはありませんのでご自分で研究してみて下さい。マテリアルについては「Maxwell Render」のユーザーガイド(日本語版)などが非常に参考になります。
なお、KTの基本的なことがらは「Kerkytheaに挑む~その1」から「その3」までを参照下さい。
特にKT初心者の方はいきなりこの章を読んでも意味不明だろうと思いますので、必ず「その1」から読み進めて下さい。

1) プラスチックを表現する

プラスチックのような比較的滑らかで緩い反射を持つ素材を表現するには以下の赤丸印の部分に適切な数値を入力します。
KTを起動し、レンダリングするシーンを読み込んだ上で、メニュー>[Settings]>[Materials...]を開き、GSUから持ってきたマテリアルを「Select All」で選択した上で「Rebuild Selected」でプレビュー状態にしてから右クリック>「EDIT」でaterial Editorを起動させて行います。(詳しくは「その3」をご覧下さい)

見え方と各設定値は以下の通りです。下に行くほど滑らかで艶がある状態になります。
簡単に言ってしまえば「Diffuse」を減らして、「Specular」を増やせば光沢が増します。なお、「Diffuse」と「Specular」の和が必ず1.0以下になるよう調整します。
 レンダリング結果
設定値
デフォルト
(GSUからエクスポートしたままの状態)

	

Diffuse=0.90
Specular=0.10
Shineess=50.0
Specular Sampling=ON
Index of Refraction=2.0

	

Diffuse=0.80
Specular=0.20
Shineess=50.0
Specular Sampling=ON
Index of Refraction=2.0

	

Diffuse=0.70
Specular=0.30
Shineess=50.0
Specular Sampling=ON
Index of Refraction=2.0

	

Diffuse=0.60
Specular=0.40
Shineess=50.0
Specular Sampling=ON
Index of Refraction=2.0

	

Diffuse=0.50
Specular=0.50
Shineess=50.0
Specular Sampling=ON
Index of Refraction=2.0

また、色を変えるには、「Diffuse」の色の部分をクリックして「Select Color」ウィンドウを開き適当な色を選択します。
インジケータ(赤矢印)の位置が変わるとDiffuse値が変化しますので、動かないことを確認しながら色を選択して下さい。

「Reflection」は「反射」で、周囲の風景が写り込みます。周囲の状況によって雰囲気が変化します。例えば明るい空などがあると全体的に明るくなります。
数値を増やすと写り込みがより鮮明になり、1.0で「鏡」になります。
ちなみに上記レンダリング例の最高レベル(Diffuse=050、Specular=0.5 ・・・)の時に、Reflectionを0..2に設定したものを下記に示します。背景(白)や床面の明るさを拾ってかなり明るめになっている点に注意して下さい。

テクスチャ(ビットマップ)の場合もほぼ同じですが、「Diffuse」値を下げるとテクスチャの詳細が見えにくくなりますので、なるべくデフォルト(0.85)に近い状態を保ち、Specularを0.15程度にとどめるのが無難です。その代り、Reflectionを0.05以上必ず加えることで、周囲の写り込みで光沢を表現した方が質感を伝えやすいと思います。下記に例を示します。

	

デフォルト

	

Diffuse=0.85
Specular=0.15
Shineess=128.0
Specular Sampling=ON
Reflection=0.05
Index of Refraction=3.0

2) ガラスを表現する

KTでは、ガラスのような透明度のあるマテリアルは通常、専用のマテリアルセットを用いますが、ひとくちに「透明度のあるマテリアル」と言っても様々な種類がありますので、主として以下の3つの方法を用いて表現することが可能です。

●GSUの透明マテリアルを使う

GSUで設定した透明度のあるマテリアルはKTでも一応そのまま表現可能です。
ただ、単に透明度を持つだけで何となくリアルではありませんが、光沢と反射を加えてやればそれなりに見えますので、簡単に処理したい時はこれもひとつの選択肢かな?と思います。
特に、ライト光源を使用した際のライトカバーやランプシェードのようなものは半透明にしておくとほどよく光を拡散してくれて便利です。

	

デフォルト
(Opacity=50)

	

Diffuse=0.45(デフォルト)
Specular=0.1
Shininess=50.0
Reflection=0.15
Refraction=0.5
Index of Refraction=2.0

●スリガラス(Frost Glass)を表現する

粗めのスリガラスのような表現です。
専用のマテリアルセットを使わず通常の[Matte/Phong]を使います。
「Transmitted Shininess」の数値が大きいほど透明度が高くなります。
レンダリング時により多くのマシンパワーを必要としますので多用する場合は注意が必要です。
カラー設定やテクスチャの利用も可能です。

	

Transmittance=1.0
Transmitted Shininess=1250
Transmitted Sampling=ON

	

Transmittance=1.0
Transmitted Shininess=500
Transmitted Sampling=ON

●専用のガラスマテリアルを使って表現する

KT標準の透明マテリアルを使うにはまずマテリアルセットを選択する必要があります。
Material Editorを開いて、ウィンドウ下部の黄色い部分で右クリックするとマテリアルセットが表示されますので、その中の [Dielectric/Glass]か「Thin Glass Material」を選択します。

[Dielectric/Glass]の”Dielectric”とは直訳すると「絶縁」とか「誘導体」と言った意味ですが、要するに厚み(屈折)のある透明物質(レンズ、宝石、液体など)の表現が出来ます。
また、 [Thin Glass Material]は文字通り「薄板ガラス素材」で、実質的に屈折のない薄い透明物質(窓ガラス、ビン、グラスなど)の表現に用います。

	

[Dielectric/Glass]

Reflection=1.0
Refraction=1.0
Index of Refraction=1.52

	

[Thin Glass]

Reflection=1.0
Index of Reflection=1.52

[Dielectric/Glass]は「Refraction」の数値を下げるとサングラスのように濃度が上がり、「Index of Refracion」の数値が1.0の時屈折率がゼロ(完全透明)になり、1.0以下は凹レンズ、1.0以上は凸レンズのようになって、1.0から離れるほど「度」が強くなります。
また、「Reflection」の数値が小さいほど反射率が低下します。一見すると影響がないようにも見えますが、通常は1.0にしておいた方が無難でしょう。

[Thin Glass Material]は、「Reflection」の数値で濃度を設定します。
「Index of Reflection」の数値が1.0で反射がゼロになって完全透明になります。1.0以上で数値が大きいほど反射率が上がり、逆に1.0以下になるとマイナスの反射(裏側で反射しているような状態? この辺はよく解らない...)になります。

いずれも濃度設定のところで色の変更やテクスチャの利用が可能です。色ガラスや液体、あるいはデザインガラスの表現に使えます。

	

[Dielectric/Glass]

Reflection=1.0
Refraction=1.0
(R=0 G=255 B=163)
Index of Refraction=1.52

	

[Thin Glass]

Reflection=1.0
(R=0 G=255 B=163)
Index of Reflection=1.52

3) 金属を表現する

●メタルを表現する

金や銀、アルミなどの素材感は、ひとことで言ってしまえば高い数値の「Specular」の色で決まります。
「Gold2」のように周囲の写り込みがある方がより金属っぽく見えますので、必要に応じて
「Reflection」を0.1以上加えると良いでしょう。
 レンダリング結果

	

設定値

	

Gold1(金)

Diffuse=0.05
(R=12 G=8 B=2)
Specular=0.95
(R=242 G=152 B=55)
Shineess=100.0
Specular Sampling=ON
Index of Refraction=16.0

	

Gold2(反射のある金)

Diffuse=0.05
(R=12 G=8 B=2)
Specular=0.95
(R=242 G=152 B=55)
Shineess=100.0
Specular Sampling=ON
Reflection=0.2
Index of Refraction=16.0

	

Silver1(なめらかな銀)

Diffuse=0.1
(R=25 G=25 B=25)
Specular=0.9
(R=230 G=230 B=230)
Shineess=60.0
Specular Sampling=ON
Index of Refraction=10.0

	

Silver2(やや粗い銀)

Diffuse=0.1
(R=51 G=51 B=51)
Specular=0.9
(R=204 G=204 B=204)
Shineess=10.0
Specular Sampling=ON
Index of Refraction=10.0

	

Copper(銅)

Diffuse=0.0
Specular=1.0
(R=255 G=110 B=39)
Shineess=100.0
Specular Sampling=ON
Index of Refraction=15.0

	

Chromium(クロム)

Diffuse=0.0
Specular=1.0
(R=255 G=255 B=255)
Shineess=60.0
Specular Sampling=ON
Index of Refraction=20.0

	

Aluminum(アルミニウム)

Diffuse=0.35
(R=89 G=89 B=89)
Specular=0.65
(R=165 G=165 B=165)
Shineess=10.0
Specular Sampling=ON
Index of Refraction=10.0

●化粧磨きをした金属を表現する

銀やステンレスの食器や調理器具、金属製の化粧パネルなどで、反射や光沢に模様のあるものがありますが、そういった金属素材を表現する方法です。

専用のマテリアルセット=[Anisotropic(WARD)]を用います。
因みに”Anisotropic”とは「異方性の」という意味です。

「Diffuse」値を増やすと拡散した感じになります。
「Roughness」も表面の滑らかさを決めるパラメータで「Diffuse」値と同じように機能します。小さいほど滑らかになります。また、RoughnessのXとYの比率を変えると光沢(反射)の形が変化し、同比率になると円形になります。
「Rotate」は光沢(反射)の角度で、90.0で垂直になります。

なお、他のマテリアルと同様、色付けやテクスチャの利用も可能です。一定方向の研磨跡を表現したようなテクスチャを利用すればさらにリアルな表現が可能になります。
 レンダリング結果

	

設定値

	

通常

Diffuse=0.0
Specular=1.0
RoughnessX=0.3
RoughnessY=3.0
Specular Sampling=ON
Rotate=0.0

	

やや拡散光の多い表面

Diffuse=0.3
Specular=0.7
RoughnessX=0.3
RoughnessY=3.0
Specular Sampling=ON
Rotate=0.0

	

やや粗い表面

Diffuse=0.0
Specular=1.0
RoughnessX=0.5
RoughnessY=3.0
Specular Sampling=ON
Rotate=0.0

	

磨きの方向が45度の表面

Diffuse=0.0
Specular=1.0
RoughnessX=0.3
RoughnessY=3.0
Specular Sampling=ON
Rotate=45.0