Kerkytheaに挑むその3

その3~エミッタを利用したレンダリング編)

今回は「Kerkythea Rendering System」(以下KTと略す)で”Self Luminance”(エミッタ)を使ったレンダリングに挑戦してみましょう。
エミッタを用いた照明効果は最近のレンダラーの流行りで、最近発売されたレンダラーは大半がこのタイプです。
エミッタ照明の利点は、光源そのものを自由に作れ光源自身の形も表現出来る点と、その結果非常にリアルな照明効果が得られることにあります。
ただし、この方法を使うとより長いレンダリング時間を必要とする点が唯一の欠点と言えます。KTとSU2KTの入手、インストール、基本的な使い方、太陽光源を使った最も基本的なレンダリング、ライト光源を使ったレンダリングについては「Kerkytheaに挑む(その1~セットアップと最初の第一歩編)」 「Kerkytheaに挑む(その2~ライト光源を利用したレンダリング編)」をご覧下さい 。

1) 光源そのものの表現方法

前のライト光源を使ったレンダリング編で最終出力した画像をもう一度ここに表示してみました。何か変ですよね?  ダウンライトがあるように光輪が床にあるのに、その出元となる天井部分に光源が見当たりません。

画像の説明
ライト光源を使う場合、光の出元が見えない位置にある場合は全く問題ないのですが、見える場合はそれも何らかの形で表現してやらないと何となく不自然な感じになってしまいます。例えば、下のようにダウンライト器具を用意して天井部に埋め込んでやれば、器具の内部が明るく輝くことで光源そのものの存在も表現することが出来ます。

画像の説明
画像の説明
また、下のように半透明のグローブ(ライトカバー)を付けてやるのもひとつの方法です。

画像の説明
画像の説明

でも、フラットな面光源(例えば液晶ディスプレイとか)や蛍光灯、ネオンのように管状の光源の時はこれでは対応が難しいです。そこで登場するのが、”Self Luminance”機能を使った照明です。 これはマテリアルを発光させることで、そのマテリアルを適用したモデル自身を光源としてしまうものです。

2) GSUでのモデリング

GSUでのモデリングは通常の場合と大きな違いはありません。唯一注意すべき点は光源となる部分は必ず他と識別できるマテリアルを適用しておく...ということだけです。なお、マテリアルはKTで入れ替えますので、ここでは色でもテクスチャでも何でもかまいません。

画像の説明

作成できたらSU2KTでデータを出力しておきます。

3) KTでのマテリアル設定

KTを起動して先ほど出力したデータを開きます。
メニュー>[Settings]>[Materials]を開きます。
下のような設定ウィンドウが表示されますので左側「scene Materials」の部分で右クリック>[Select All]を選択しすべてのマテリアルを選択状態にした上で、右クリック>[Rebuild Selected]を選びます。

画像の説明

するとGSUで設定した色やテクスチャが表示されます。

画像の説明

GSUで光源に指定した色(またはテクスチャ)を選択して右クリック>[Edit](あるいはWクリック)すると下のような「Material Editor」が表示されますので、上のタブの左から2番目にある「Advanced」を開いて下さい。
最上段の「Self Luminance」の「Color」の部分に数値を入力します。照明用には細かい数値では意味がないようなので、10とか20、30とかの割と思い切った?大きめの数値を入力するのがポイントです。(テストレンダリングしてみて数値を修正して下さい)光の色を変えたい場合は色の部分をWクリックするとカラーホイールが出現しますのでそれで設定可能です。ただし、光は強くなればなるほど限りなく白に近づく・・・ということを考慮しておいて下さい。数値を大きくすると色設定の効果はほとんど失われます。

画像の説明

Tosiharu Kさんのご好意により、これらの一連の手順を紹介するムービーを公開していただきました。
 >> チュートリアルムービーを見る
※この中で使われているライト用マテリアルはTKさん作の「Lamp Preset」です。
  元々「Maxwell Render」向けのものですが、KTにも利用可能です。
  複数の光源設定をする場合とても便利です。
 

4) レンダリング

これで準備完了です。早速テストレンダリングしてみましょう。
いつものように「StartRender」のボタンをクリックしてレンダリング開始...ということになりますが、実はこの方法でライティングしたシーンはレンダリングに猛烈な時間を要します。
太陽光のシーンなら一瞬あるいは数秒で終わる「RayTracing-Quick」でも%表示は一向に進みません。これがGI系となるとさらに遅くなり、VGAサイズでもヘタすると何時間も要する可能性があります。最終出力なら辛抱も出来ますが、ちょっと確認したい時には大変イライラさせられます。
そんな時に便利なのが「Bidirectional Path Tracing」(BIPT)です。
これはユーザー自身がレンダリング状況を見ながら、任意のレンダリング精度を選択できるという便利な機能です。
最初の結果はザラザラですが数秒~数十秒以内に確認することが可能であり、レンダリングを繰り返すことで徐々に画質が向上して行きます。

画像の説明

レンダリング状況はいつでもイメージウィンドウで確認出来ます。
中止して再設定することも、そのまま継続して満足の行く画質になったら停止させ「完成画像」として保管することも出来ます。

画像の説明

BIPTの難点は「止め時の判断が難しい」ということがあげられます。一度、通過儀式?として1000回位までで段階的に画像を保管して見比べてみると良いと思います。
ちなみにここでいう「回数」とはレンダリング回数のことで、KTの画面左上にレンダリング中情報が表示されます。そのまま放っておくと10000回まで繰り返します。
また、KTのPath Tracing系にはホワイトフライノイズが乗る…というようなお話もあるようですが、これは後で画像補正したり、同じシーンを2度レンダリングしてそれぞれの画像を重ね合成する...というようなテクニックがあるそうです。
参考までに50回のものをサンプルとして示しておきます。まだ粒状感はかなりありますが、「GI-Quick」のほぼ半分のレンダリング時間で画質的にはこちらの方が上だと思います。

画像の説明

また、ネオン管?はこんな感じです。

画像の説明

色の代りに画像を光源にすると、CRTや液晶ディスプレイも表現出来ます。ただ、照明にするほど光量を上げると画面が完全に白飛びしてしまいますので、ポイントライトを後から1灯追加して
(メニュー>[Edit]>「Add」>「Omnilight」で追加可能)、それを主光源とし、画像側の光量は白飛びしない範囲(1.0)に抑えてあります。結果、あまり画面が光っている感じはしませんが...

画像の説明