Kerkytheaに挑む
「Kerkythea Rendering System」はフリーのレンダリングソフトです。(以下KTと略します。) レンダラーというのは三次元モデルを綺麗な画像にして出力するソフトのことです。一般的には「”写真のような”画像を生成するためのソフト」を指すことが多いです。
KTは非常に高機能なレンダラーです。フリーと言っても侮ってはいけません。商用レンダラーとほぼ同じ機能を持ち、バージョンアップによってどんどん進化を続けています。 ただ、これまでのKTは日本語のドキュメント類がほとんどなく、「難解」、「敷居が高い」という印象が強く、その高機能さとは裏腹に国内ではあまり普及してきませんでした。
SketchUpとはKTの初期バージョンの頃からSU2K(現在のSU2KT)というプラグインを介して関係が深く、KTユーザーの大部分はSUユーザーであると言われいるほどですが、従来はSU2Kによって出力するカメラ・ライトデータと3DSなどの形式で出力するモデルデータの2種類が必要であり、事実上GSUでは利用出来ませんでした。
ところが、SU2Kの2.x以降はデータがXML形式ひとつに統合されGSUでも簡単に利用出来るようになりました。また、データの1本化によってすごく手軽に扱えるようにもなり、コツさえつかめば誰でも簡単に美しいレンダリング画像を得ることが可能になりました。
今回はKTとSU2KTの入手とインストール、最も簡単な太陽光を使ったレンダリング方法を紹介し、ライト光源を使ったレンダリングや、エミッタを使ったさらに高度なレンダリングについて系統立ててメモしていきます。
1) KTの入手とインストール
- トップメニューから「右赤枠」の「DOWNLOADS」ボタン又は、「下赤枠」の「DOWNLOADS」を選びます。
- DOWNLOADS画面から「for Windows(3.0MB)」をクリック
- ダウンロードダイアログボックスが表示されたら「ファイル保存」クリック
- ソフトがダウンロードされます
- ダウンロードした実行ファイルをクリックすれば、インストーラーが起動し自動でセットされます。
- インストールが始まります
- 「I Agree」をクリック
- 「Next」をクリック
- 「Install」をクリック
- KeaKyutheaアイコンが表示されたことを確認してください。以上でインストールは完了です。
2) SU2KTの入手とインストール
- 同様に画面の[Dounload SketchUP Plugin]の下の「For Windows / Mac OS v 319 (54KB) 」をクリック
一番上はGSUで使えるライトコンポーネントの元となる3Dモデル(3種類入)です。詳しくは「Kerkytheaに挑む(その2~ライト光源を利用したレンダリング編)」を参照して下さい。
2番目がプラグイン本体(インストーラ無し)、3番目がインストーラとライトコンポーネント集付)です。 お好みでお使い下さい。
ライトコンポーネント集とは、GSUで利用可能なライトオブジェクトを仕込んだ様々な照明器具のコンポーネント集です。
なお、「Ruby Script Library」でも収録されています。
>> https://www.crai.archi.fr/RubyLibraryDepot/Ruby/em_fil_page.htm
(Files-Converters-Miscに分類されています)
※2007年2月11日現在の最新バージョンはGSU5、6両用の2.11です。
インストーラ付のものはインストール画面の指示に従って進めて下さい。基本的にGSUのインストール先を指定することが必要です。
インストール無しのものは圧縮されていますので適当なフォルダに解凍して下さい。
解凍すると 「su2kt.rb」、 「SU2KT_Tutorial.skp」、「Animation_Tutor.skp」と言うファイルが現われます。(バージョンによって多少異なる場合があります)
このうちの「su2kt.rb」をGSUのインストールフォルダ下のPluginsフォルダにコピー(移動)すればインストール完了です。
パソコンの操作に慣れている方ならインストーラ無しの方が扱いやすいかも知れません。
もし、従来のSU2Kをインストールしていると[メニュー]>[Plugins]に古いバージョンのものも表示されますので、古い"su2k.rb"は削除して下さい。
(下の方がSU2KTで、ダブっていても特に害はありませんが…)
なお、「SU2KT_Tutorial.skp」は英語版ながら、SU2KTの使い方が記された唯一のドキュメントであり、またライト光源を使う際の貴重なリソースになりますので一度眺めた?上で保存しておいて下さい。
また、「Animation_Tutor.skp」はv.2.1から新たに加わったアニメーション出力機能のチュートリアルです。これも一度眺めておくと良いでしょう。
うまくプラグインがインストール出来たら、GSUの[メニュー]>[Plugins]にK
erkythea Exporyer」が表示されます。
3)SketchUpプラグインをダウンロード
Windows / MacOSX v_3_19(54 KB)の場合
SketchUp 6、7、8、2013、2014、2015、2016、2017、2018(MakeまたはPro)
の場合.rbz形式のSU2KT Rubyプラグインスクリプトをインストールするには:
1。インストールする前に、管理者としてコンピューターにログインすることをお勧めします。 Rubyスクリプト。
これにより、インストールがよりスムーズに進み、ファイルが適切な場所に確実にインストールされるようになります。
2. [ウィンドウ]> [設定](Microsoft Windows)または[SketchUp]> [設定](Mac OS X)を選択します。[設定]ダイアログボックスが表示されます。
3.拡張機能をクリックします。拡張機能パネルが表示されます。
4. [拡張機能のインストール]ボタンをクリックします。[開く]ダイアログボックスが表示されます。
5.インストールするSU2KTファイル(.rbz)を見つけます。
6. [開く]ボタンをクリックします。Rubyプラグインが拡張機能のリストに表示されます。
7.SketchUpを再起動します。
追加手順:
Google SU2014 +
の場合:rbzファイルをSketchup \ Plugins>> Sketchup \ Plugins \ su2kt \>> Sketchup \ Plugins \ su2kt.rbに解凍します。古いファイルをすべて上書きします。
PCの場合、プラグインフォルダは次のとおりです。
"C:\ Users \\ AppData \ Roaming \ SketchUp \ SketchUp 2014 \ SketchUp \ Plugins \ "
MACではプラグインはユーザーフォルダです:〜/ Library / Application Support / SketchUp 2014 / SketchUp / Plugins
Google SketchUp 8以前の場合:
PCではプラグインフォルダは次のとおりです。
C:\ Program Files \ Google \ Google Sketchup ... \ Plugins
MACでは、プラグインは次のとおりです。MacintoshHD/ライブラリ/アプリケーションサポート/ GoogleSketchup ...... / Sketchup / plugins
4)KTの第一歩~太陽光源による超簡単極楽レンダリング
以下は旧バージョンである1.304に基づいて記述されていますが現行バージョンの1.41でも基本的には同じですので、適当に読み代えてご覧下さい。また、GSUは5が基準になってますが6でも同様です。これで準備が完了しました。それでは早速、一番簡単?なレンダリングをやってみましょう。
まずGSUでモデルを作成します。作成上の注意点は次の3つだけです。
- モデルはすべて表(おもて)面に向けておく(デフォルトでは白が表、ブルーが裏面)
- オリジナルのテクスチャ(マテリアル)を使う際は必ず半角英数字のファイル名にしておく。
- SU2KTでの出力の際はデータ名、保存先名ともに必ず半角英数字の名前にする。
今回は光源に太陽を使いますのでGSU上で影表示を有効にし、季節や方向も調整しておきます。
GSU側ではこれだけです。[メニュー]>[Plugins]>[Kerkythea Exporyer]から「Export Model」を開き、KT形式のデータとして出力します。
設定ウィンドウが開きますがこのままで「OK」ボタンを押します。
なお、先にも述べましたが保存先のフォルダ名、ファイル名は必ず半角英数字である必要があります。
出力が出来たら、KTを起動し、[メニュー]>[Files]>[Open]で先ほど出力したファイルを開きます。
ツールアイコン(Start Render)か[メニュー]>[Render]>[Start]を開き設定を行います。
今回は太陽光を使ったシーンですので「Settings」(レンダリング方法設定)はRayTrace系をお勧めします。
「Resolution」(解像度)はお好みのサイズにすれば良いと思いますが、 最初は小さいサイズでテストして大きなサイズで仕上げ出力をするのが効率的でしょう。
なお、視点を調整したい時はマウスのホイールボタンでドラッグすると回転し、ホイールを回すとズーミング出来ます。パンは「手のひら」アイコンを選択して行います。
この例程度のデータと解像度であれば最高品質で出力しても数秒位と思います。
レンダリングの進行状況は画面左上に情報が表示され、編集画面上にもカギ(南京錠?)がかかりますので確認できます。
また、レンダリングを一時停止したい時は(Pause Render)、中止したい時は(Stop Render)を押して下さい。(上のメニューからでも選択できます)
レンダリングが終わったらツールアイコン(Image)を開くと画像が表示されているはずです。
この表示ウィンドウは非常に便利で、左側の「Exposure」や「Gamma」などを調整するとその場で出力画像の調整が行えます。調整が済んだら左上の「Save」を押して保存ウィンドウを開き、適当な名前を付けて画像を保存出来ます。
以上で簡単レンダリングは完了です。
要するにGSUで影表示さえしておけば、KTの詳細(難解?)なレンダリング設定には全く手を触れずとも一応の「絵」は出来てしまうわけです。
もちろん、これがKTの真の姿ではありません。メニューの[Settings]や[Render]の[Setup]あたりを調整することで非常に高度なレンダリングも可能です。
ちなみに背景の空の設定を調整したい時は[メニュー]>[Settings]>[Sun&Sky]で行います。
Kerkytheaに挑むその2
その2~ライト光源を利用したレンダリング編)
以下は特に注釈がない限り、旧バージョンである1.304に基づいて記述されていますが、現行バージョンの1.41でも基本的には同じですので、適当に読み代えてご覧下さい。また、GSUは8でも同様です。
今回は「Kerkythea Rendering System」(以下KTと略す)でライト光源を使ったレンダリングに挑戦してみましょう。
最近のレンダラーではライト光源を使わず、マテリアルに照明属性を設定することで任意の3Dモデルを光源そのものにしてしまう手法が主流になっています。もちろんKTにはそうした機能も搭載されていますが、それとともに伝統的?なライト光源も利用(併用)することが可能となっています。
ライト光源の利点は、光源の数にもよりますが一般的にレンダリング時間が短くて済む点と、光のメリハリが初心者にでも付けやすい点があげられます。逆に欠点は光源数が多くなると管理や設定が大変になることと、レンダラーによっては面や線形の光源を表現することが難しい点などがあげられます。
あまり複雑で微妙な照明効果を表現するのでなく、手軽でメリハリのある表現に向いている・・・と考えておくと良いと思います。
なお、KTとSU2KTの入手、インストール、基本的な使い方、太陽光源を使った最も基本的なレンダリングについては「Kerkytheaに挑む(その1~セットアップと最初の第一歩編)」をご覧下さい 。
1) ライトコンポーネントの準備
ライト光源はKTの編集画面でも新規に設定することが可能ですが、非常に操作しにくいため、ひとつやふたつならともかく、いくつかの光源を使いたい時はGSU上であらかじめ配置、設定しておく方が圧倒的に楽です。
でもGSUではそもそも太陽以外の光源は設定出来ませんので、SU2KTでは、「PovRay」というレンダラー(正確には3DCG記述言語)のためのプラグインである「SU2POV」に付属するライトコンポーネントを便宜的に流用して、仮想的にライトを配置、設定する方法を採ります。(現在、使えるライトはポイントライトとスポットライトの2種類です)したがってあらかじめSU2POVをインストールしておく必要があるのですが、わざわざこのためだけにSU2POVをインストールするのも面倒な話ですので、ここではちょっとした裏技を使ってSU2POVをインストールせずにライトコンポーネントだけを手に入れることにします。
なお、既にSU2POVをインストールされライトコンポーネントが使える状態の環境の方は以下の作業は不要です。読み飛ばして 2)へお進み下さい。
ここで役に立つのが、SU2KTのプラグインに付属するチュートリアル「SU2KT_Tutorial.skp」です。
実はこのデータの中にSU2POVのライトコンポーネントが含まれて おり、それを自分のGSUに登録すれば良いのです。以下にその手順を紹介します。
まず「SU2KT_Tutorial.skp」を開きます。(”SU2KT_Tutorial.skp”はSU2KTを入手した時の圧縮ファイル内に同梱されています)
[メニュー]>[Window]>[Components]を開き、”in Model”を選択すると下のような4種類のコンポーネントがあることが判ります。赤丸で囲んだものがライトコンポーネントで、左がポイントライト、右がスポットライトです。
それぞれのコンポーネントを選択して右クリックし「Save As」で保存先をGSUのインストールフォルダ下のComponentsフォルダか、その中の適当なフォルダに保存して下さい。(あらかじめ”SU2KT”などの半角英数字の名前のフォルダを作成しておいても良いです)
これでライトコンポーネントの準備は完了です。保存したコンポーネントのフォルダを開いて保存を確認の上、「SU2KT_Tutorial.skp」を終了させて下さい。
スポットライトは”in Model”では非常に小さかったですが、保存しなおすとちゃんとしたサイズになりますのでご安心を...
なお、少し補足しておきますと、実のところは「su2pov_spotlight」と「su2pov_pointlight」と言う名前のコンポーネントであればどんな形のものでも使えますので、自作したデータでもOKです。
また、公式サイトの[Download]>[Integration]>[SketchUp]でDL出来る「SU2KT Light Components」もチュートリアルに含まれるコンポーネントと全く同じものですのでこちらを使ってもかまいません。
2) ライトコンポーネントを使用したモデル作成
それでは早速、ライト光源を使ったシーンを作成してみましょう。
ライトを利用する上でのポイントは、コンポーネントフォルダから持ってきたライトは必ず一度定義(設定)しなければならない...という点が唯一の注意点です。
ライトの定義は、ライトを選択して右クリック>「Edit Spotlight」(スポットライトの場合)または「PointLight」(ポイントライトの場合)で表示される設定ウィンドウで一度「OK」を押すことで行えます。必ずしもパラメータを変更する必要はありません。
一度、定義したコンポーネントはコピーしてそのまま使えますが、コンポーネントフォルダから持ってきたものは毎回定義する必要があります。
スポットライトの設定パラメータの意味は、「Hot Spot」が明るい部分の角度で、値が小さいほど絞り込んだ光になります。
「Falloff」は暗くなる部分の角度で、「Hot Spot」と「Falloff」の差が小さいほどくっきりとした光輪になり、差が大きいとぼんやりした光輪になります。
「Light power」は文字通り光の強さですが特に客観的な基準があるわけでもないので適正値の判断は色々と試してみて雰囲気を掴む以外にないようです。
「Light name」はライト名称ですが、重複していても特に問題はないようです。
コンポーネントを着色するとその色の光になります。
また、 回転させるとその方向に光が投射されるようになります。光の向きは円錐の頂点から底面に向かって投射されます。
ポイントライトはスポットライトと比べると設定出来るパラメータが少ないですが、意味はスポットライトに準じます。
「OK」ボタンを押すと、続いて点灯/消灯ウィンドウが表示されます。Offにすると消灯状態になりますので、昼夜の区別や色々な照明バリエーションを作りたい時に便利です。また、このウィンドウは現在設定されている光の色の確認ウィンドウも兼ねており、上部にライトカラー名が表示されています。デフォルトは「White」ですが例では「Gold」に変更してあります。
変更はコンポーネントを着色することで行えます。
完成したら、[メニュー]>[Plugins]>[Kerkythea Exporter]>[Export Model]でKT形式のデータとして出力します。ファイル名と保存先フォルダ名は必ず半角英数字にして下さい。
3) KTでのレンダリング
KTを起動して先ほど出力したデータを読み込みます。
必要に応じて視点の変更を行いますが、太陽光の時と同様、基本的にKTではレンダリング方法と解像度を選択する以外の設定は特に必要ありません。
もちろんその気になれば、ライト設定の変更なども行えます。(選択ツール)
で選択モードにした上で電球形のライトを選択し(光が影響する範囲が表示されます)、移動はライトの周囲にあるハンドル(方向矢印)をドラッグすることで行えます。また、明るさの調整は、スポットライトならHot Spotは編集画面右上のスライダ(上段)、Falloutは下段を調整することで、ポイントライトはLightPowerのみ調整出来るようになっています。
また、メニュー>[Setting]>[Scene]の「Lights」で色や光の強さなどを個々のライト毎に設定することも可能です。
KT2007になって扱えるライトに「Projector Light」が増えましたが、今のところGSU上で設定することは出来ないようです。メニュー>[Insert]>「Projector Light...」で追加して下さい。
レンダリングは太陽光の時と同様に(Start Render)をクリックして設定ウィンドウを開いて行います。この例のような複数の光源を組み合わせたようなシーンでは、間接光の表現に長けたGI系やPath Tracing系をお薦めします。Ray Tracing系と比べるとレンダリング時間は長めになりますがその分リアルな仕上がりが期待出来ます。
この例ではレンダリング結果がかなり暗めに上がったので、イメージウィンドウ上でExposureの数値を大きくして明るくしてあります。
Kerkytheaに挑むその3
その3~エミッタを利用したレンダリング編)
今回は「Kerkythea Rendering System」(以下KTと略す)で”Self Luminance”(エミッタ)を使ったレンダリングに挑戦してみましょう。
エミッタを用いた照明効果は最近のレンダラーの流行りで、最近発売されたレンダラーは大半がこのタイプです。
エミッタ照明の利点は、光源そのものを自由に作れ光源自身の形も表現出来る点と、その結果非常にリアルな照明効果が得られることにあります。
ただし、この方法を使うとより長いレンダリング時間を必要とする点が唯一の欠点と言えます。KTとSU2KTの入手、インストール、基本的な使い方、太陽光源を使った最も基本的なレンダリング、ライト光源を使ったレンダリングについては「Kerkytheaに挑む(その1~セットアップと最初の第一歩編)」 「Kerkytheaに挑む(その2~ライト光源を利用したレンダリング編)」をご覧下さい 。
1) 光源そのものの表現方法
前のライト光源を使ったレンダリング編で最終出力した画像をもう一度ここに表示してみました。何か変ですよね? ダウンライトがあるように光輪が床にあるのに、その出元となる天井部分に光源が見当たりません。ライト光源を使う場合、光の出元が見えない位置にある場合は全く問題ないのですが、見える場合はそれも何らかの形で表現してやらないと何となく不自然な感じになってしまいます。例えば、下のようにダウンライト器具を用意して天井部に埋め込んでやれば、器具の内部が明るく輝くことで光源そのものの存在も表現することが出来ます。また、下のように半透明のグローブ(ライトカバー)を付けてやるのもひとつの方法です。でも、フラットな面光源(例えば液晶ディスプレイとか)や蛍光灯、ネオンのように管状の光源の時はこれでは対応が難しいです。そこで登場するのが、”Self Luminance”機能を使った照明です。 これはマテリアルを発光させることで、そのマテリアルを適用したモデル自身を光源としてしまうものです。
2) GSUでのモデリング
GSUでのモデリングは通常の場合と大きな違いはありません。唯一注意すべき点は光源となる部分は必ず他と識別できるマテリアルを適用しておく...ということだけです。なお、マテリアルはKTで入れ替えますので、ここでは色でもテクスチャでも何でもかまいません。作成できたらSU2KTでデータを出力しておきます。
3) KTでのマテリアル設定
KTを起動して先ほど出力したデータを開きます。
メニュー>[Settings]>[Materials]を開きます。
下のような設定ウィンドウが表示されますので左側「scene Materials」の部分で右クリック>[Select All]を選択しすべてのマテリアルを選択状態にした上で、右クリック>[Rebuild Selected]を選びます。するとGSUで設定した色やテクスチャが表示されます。GSUで光源に指定した色(またはテクスチャ)を選択して右クリック>[Edit](あるいはWクリック)すると下のような「Material Editor」が表示されますので、上のタブの左から2番目にある「Advanced」を開いて下さい。
最上段の「Self Luminance」の「Color」の部分に数値を入力します。照明用には細かい数値では意味がないようなので、10とか20、30とかの割と思い切った?大きめの数値を入力するのがポイントです。(テストレンダリングしてみて数値を修正して下さい)光の色を変えたい場合は色の部分をWクリックするとカラーホイールが出現しますのでそれで設定可能です。ただし、光は強くなればなるほど限りなく白に近づく・・・ということを考慮しておいて下さい。数値を大きくすると色設定の効果はほとんど失われます。
Tosiharu Kさんのご好意により、これらの一連の手順を紹介するムービーを公開していただきました。
>> チュートリアルムービーを見る
※この中で使われているライト用マテリアルはTKさん作の「Lamp Preset」です。
元々「Maxwell Render」向けのものですが、KTにも利用可能です。
複数の光源設定をする場合とても便利です。
4) レンダリング
これで準備完了です。早速テストレンダリングしてみましょう。
いつものように「StartRender」のボタンをクリックしてレンダリング開始...ということになりますが、実はこの方法でライティングしたシーンはレンダリングに猛烈な時間を要します。
太陽光のシーンなら一瞬あるいは数秒で終わる「RayTracing-Quick」でも%表示は一向に進みません。これがGI系となるとさらに遅くなり、VGAサイズでもヘタすると何時間も要する可能性があります。最終出力なら辛抱も出来ますが、ちょっと確認したい時には大変イライラさせられます。
そんな時に便利なのが「Bidirectional Path Tracing」(BIPT)です。
これはユーザー自身がレンダリング状況を見ながら、任意のレンダリング精度を選択できるという便利な機能です。
最初の結果はザラザラですが数秒~数十秒以内に確認することが可能であり、レンダリングを繰り返すことで徐々に画質が向上して行きます。
レンダリング状況はいつでもイメージウィンドウで確認出来ます。
中止して再設定することも、そのまま継続して満足の行く画質になったら停止させ「完成画像」として保管することも出来ます。
BIPTの難点は「止め時の判断が難しい」ということがあげられます。一度、通過儀式?として1000回位までで段階的に画像を保管して見比べてみると良いと思います。
ちなみにここでいう「回数」とはレンダリング回数のことで、KTの画面左上にレンダリング中情報が表示されます。そのまま放っておくと10000回まで繰り返します。
また、KTのPath Tracing系にはホワイトフライノイズが乗る…というようなお話もあるようですが、これは後で画像補正したり、同じシーンを2度レンダリングしてそれぞれの画像を重ね合成する...というようなテクニックがあるそうです。
参考までに50回のものをサンプルとして示しておきます。まだ粒状感はかなりありますが、「GI-Quick」のほぼ半分のレンダリング時間で画質的にはこちらの方が上だと思います。
また、ネオン管?はこんな感じです。
色の代りに画像を光源にすると、CRTや液晶ディスプレイも表現出来ます。ただ、照明にするほど光量を上げると画面が完全に白飛びしてしまいますので、ポイントライトを後から1灯追加して
(メニュー>[Edit]>「Add」>「Omnilight」で追加可能)、それを主光源とし、画像側の光量は白飛びしない範囲(1.0)に抑えてあります。結果、あまり画面が光っている感じはしませんが...
Kerkytheaに挑むその4
マテリアルの基本編
今回は「Kerkythea Rendering System」(以下KTと略す)のマテリアルの基本的な使い方についてご紹介します。
前回の”Self Luminance”(エミッタ照明)もそのひとつですが、マテリアルを編集(操作)することで面の光沢や反射、明るさ、透明度、凸凹等を表現することが可能です。これらは大半が現在のGSUのマテリアル環境では表現出来ない部分ですので、KT側で操作する必要がありますが、ちょっと効果を加えるだけで、非常に表現力に富んだレンダリング結果が期待出来ます。ただし、マテリアルの操作は、KTに限らず、非常に奥の深い分野です。概念や用語だけでも、とても紹介しきれるものではありませんので、ここでは最小限の結果のみをご紹介することとします。用語や紹介しきれない項目については、他のレンダラーでも大きな違いはありませんのでご自分で研究してみて下さい。マテリアルについては「Maxwell Render」のユーザーガイド(日本語版)などが非常に参考になります。
なお、KTの基本的なことがらは「Kerkytheaに挑む~その1」から「その3」までを参照下さい。
特にKT初心者の方はいきなりこの章を読んでも意味不明だろうと思いますので、必ず「その1」から読み進めて下さい。
1) プラスチックを表現する
プラスチックのような比較的滑らかで緩い反射を持つ素材を表現するには以下の赤丸印の部分に適切な数値を入力します。
KTを起動し、レンダリングするシーンを読み込んだ上で、メニュー>[Settings]>[Materials...]を開き、GSUから持ってきたマテリアルを「Select All」で選択した上で「Rebuild Selected」でプレビュー状態にしてから右クリック>「EDIT」でaterial Editorを起動させて行います。(詳しくは「その3」をご覧下さい)
見え方と各設定値は以下の通りです。下に行くほど滑らかで艶がある状態になります。
簡単に言ってしまえば「Diffuse」を減らして、「Specular」を増やせば光沢が増します。なお、「Diffuse」と「Specular」の和が必ず1.0以下になるよう調整します。
レンダリング結果
設定値
デフォルト
(GSUからエクスポートしたままの状態)
Diffuse=0.90
Specular=0.10
Shineess=50.0
Specular Sampling=ON
Index of Refraction=2.0
Diffuse=0.80
Specular=0.20
Shineess=50.0
Specular Sampling=ON
Index of Refraction=2.0
Diffuse=0.70
Specular=0.30
Shineess=50.0
Specular Sampling=ON
Index of Refraction=2.0
Diffuse=0.60
Specular=0.40
Shineess=50.0
Specular Sampling=ON
Index of Refraction=2.0
Diffuse=0.50
Specular=0.50
Shineess=50.0
Specular Sampling=ON
Index of Refraction=2.0
また、色を変えるには、「Diffuse」の色の部分をクリックして「Select Color」ウィンドウを開き適当な色を選択します。
インジケータ(赤矢印)の位置が変わるとDiffuse値が変化しますので、動かないことを確認しながら色を選択して下さい。
「Reflection」は「反射」で、周囲の風景が写り込みます。周囲の状況によって雰囲気が変化します。例えば明るい空などがあると全体的に明るくなります。
数値を増やすと写り込みがより鮮明になり、1.0で「鏡」になります。
ちなみに上記レンダリング例の最高レベル(Diffuse=050、Specular=0.5 ・・・)の時に、Reflectionを0..2に設定したものを下記に示します。背景(白)や床面の明るさを拾ってかなり明るめになっている点に注意して下さい。
テクスチャ(ビットマップ)の場合もほぼ同じですが、「Diffuse」値を下げるとテクスチャの詳細が見えにくくなりますので、なるべくデフォルト(0.85)に近い状態を保ち、Specularを0.15程度にとどめるのが無難です。その代り、Reflectionを0.05以上必ず加えることで、周囲の写り込みで光沢を表現した方が質感を伝えやすいと思います。下記に例を示します。
デフォルト
Diffuse=0.85
Specular=0.15
Shineess=128.0
Specular Sampling=ON
Reflection=0.05
Index of Refraction=3.0
2) ガラスを表現する
KTでは、ガラスのような透明度のあるマテリアルは通常、専用のマテリアルセットを用いますが、ひとくちに「透明度のあるマテリアル」と言っても様々な種類がありますので、主として以下の3つの方法を用いて表現することが可能です。
●GSUの透明マテリアルを使う
GSUで設定した透明度のあるマテリアルはKTでも一応そのまま表現可能です。
ただ、単に透明度を持つだけで何となくリアルではありませんが、光沢と反射を加えてやればそれなりに見えますので、簡単に処理したい時はこれもひとつの選択肢かな?と思います。
特に、ライト光源を使用した際のライトカバーやランプシェードのようなものは半透明にしておくとほどよく光を拡散してくれて便利です。
デフォルト
(Opacity=50)
Diffuse=0.45(デフォルト)
Specular=0.1
Shininess=50.0
Reflection=0.15
Refraction=0.5
Index of Refraction=2.0
●スリガラス(Frost Glass)を表現する
粗めのスリガラスのような表現です。
専用のマテリアルセットを使わず通常の[Matte/Phong]を使います。
「Transmitted Shininess」の数値が大きいほど透明度が高くなります。
レンダリング時により多くのマシンパワーを必要としますので多用する場合は注意が必要です。
カラー設定やテクスチャの利用も可能です。
Transmittance=1.0
Transmitted Shininess=1250
Transmitted Sampling=ON
Transmittance=1.0
Transmitted Shininess=500
Transmitted Sampling=ON
●専用のガラスマテリアルを使って表現する
KT標準の透明マテリアルを使うにはまずマテリアルセットを選択する必要があります。
Material Editorを開いて、ウィンドウ下部の黄色い部分で右クリックするとマテリアルセットが表示されますので、その中の [Dielectric/Glass]か「Thin Glass Material」を選択します。
[Dielectric/Glass]の”Dielectric”とは直訳すると「絶縁」とか「誘導体」と言った意味ですが、要するに厚み(屈折)のある透明物質(レンズ、宝石、液体など)の表現が出来ます。
また、 [Thin Glass Material]は文字通り「薄板ガラス素材」で、実質的に屈折のない薄い透明物質(窓ガラス、ビン、グラスなど)の表現に用います。
[Dielectric/Glass]
Reflection=1.0
Refraction=1.0
Index of Refraction=1.52
[Thin Glass]
Reflection=1.0
Index of Reflection=1.52
[Dielectric/Glass]は「Refraction」の数値を下げるとサングラスのように濃度が上がり、「Index of Refracion」の数値が1.0の時屈折率がゼロ(完全透明)になり、1.0以下は凹レンズ、1.0以上は凸レンズのようになって、1.0から離れるほど「度」が強くなります。
また、「Reflection」の数値が小さいほど反射率が低下します。一見すると影響がないようにも見えますが、通常は1.0にしておいた方が無難でしょう。
[Thin Glass Material]は、「Reflection」の数値で濃度を設定します。
「Index of Reflection」の数値が1.0で反射がゼロになって完全透明になります。1.0以上で数値が大きいほど反射率が上がり、逆に1.0以下になるとマイナスの反射(裏側で反射しているような状態? この辺はよく解らない...)になります。
いずれも濃度設定のところで色の変更やテクスチャの利用が可能です。色ガラスや液体、あるいはデザインガラスの表現に使えます。
[Dielectric/Glass]
Reflection=1.0
Refraction=1.0
(R=0 G=255 B=163)
Index of Refraction=1.52
Thin Glass]
Reflection=1.0
(R=0 G=255 B=163)
Index of Reflection=1.52
3) 金属を表現する
●メタルを表現する
金や銀、アルミなどの素材感は、ひとことで言ってしまえば高い数値の「Specular」の色で決まります。
「Gold2」のように周囲の写り込みがある方がより金属っぽく見えますので、必要に応じて「Reflection」を0.1以上加えると良いでしょう。
レンダリング結果
設定値
Gold1(金)
Diffuse=0.05(R=12 G=8 B=2)
Specular=0.95(R=242 G=152 B=55)
Shineess=100.0
Specular Sampling=ON
Index of Refraction=16.0
Gold2(反射のある金)
Diffuse=0.05(R=12 G=8 B=2)
Specular=0.95(R=242 G=152 B=55)
Shineess=100.0
Specular Sampling=ON
Reflection=0.2
Index of Refraction=16.0
Silver1(なめらかな銀)
Diffuse=0.1(R=25 G=25 B=25)
Specular=0.9(R=230 G=230 B=230)
Shineess=60.0
Specular Sampling=ON
Index of Refraction=10.0
Silver2(やや粗い銀)
Diffuse=0.1
(R=51 G=51 B=51)
Specular=0.9
(R=204 G=204 B=204)
Shineess=10.0
Specular Sampling=ON
Index of Refraction=10.0
Copper(銅)
Diffuse=0.0
Specular=1.0
(R=255 G=110 B=39)
Shineess=100.0
Specular Sampling=ON
Index of Refraction=15.0
Chromium(クロム)
Diffuse=0.0
Specular=1.0
(R=255 G=255 B=255)
Shineess=60.0
Specular Sampling=ON
Index of Refraction=20.0
Aluminum(アルミニウム)
Diffuse=0.35
(R=89 G=89 B=89)
Specular=0.65
(R=165 G=165 B=165)
Shineess=10.0
Specular Sampling=ON
Index of Refraction=10.0
●化粧磨きをした金属を表現する
銀やステンレスの食器や調理器具、金属製の化粧パネルなどで、反射や光沢に模様のあるものがありますが、そういった金属素材を表現する方法です。
専用のマテリアルセット=[Anisotropic(WARD)]を用います。
因みに”Anisotropic”とは「異方性の」という意味です。
「Diffuse」値を増やすと拡散した感じになります。
「Roughness」も表面の滑らかさを決めるパラメータで「Diffuse」値と同じように機能します。小さいほど滑らかになります。また、RoughnessのXとYの比率を変えると光沢(反射)の形が変化し、同比率になると円形になります。
「Rotate」は光沢(反射)の角度で、90.0で垂直になります。
なお、他のマテリアルと同様、色付けやテクスチャの利用も可能です。一定方向の研磨跡を表現したようなテクスチャを利用すればさらにリアルな表現が可能になります。
レンダリング結果
設定値
通常
Diffuse=0.0
Specular=1.0
RoughnessX=0.3
RoughnessY=3.0
Specular Sampling=ON
Rotate=0.0
やや拡散光の多い表面
Diffuse=0.3
Specular=0.7
RoughnessX=0.3
RoughnessY=3.0
Specular Sampling=ON
Rotate=0.0
やや粗い表面
Diffuse=0.0
Specular=1.0
RoughnessX=0.5
RoughnessY=3.0
Specular Sampling=ON
Rotate=0.0
磨きの方向が45度の表面
Diffuse=0.0
Specular=1.0
RoughnessX=0.3
RoughnessY=3.0
Specular Sampling=ON
Rotate=45.0